ス略2021年クリスマスSS

SS

 結婚して初めてのクリスマスは、ふたりで一緒にキッチンに立って七面鳥を焼いた。と言っても、既に下拵えされた肉をオーブンに入れただけだが。

 もちろん丸々1羽はふたりで食べるには大きくて、残りは冷蔵庫行きになった。

 明日は朝から豪勢だ。ついでだからケーキも買ってこようか、なんて冗談を飛ばせば、まだ店が開いてないよ、と彼女は笑った。


 そんな他愛もない話をするのが、たまらなく嬉しいと颯汰は思う。


 数年前まで、夕方の校舎で話した彼女がずっと自分の支えだった。

 今、その繰り返し夢見た人が傍にいる。そして、一緒に共通の思い出を作っている……自分は愛する人と生きている。それは泣けてしまうくらいの幸せだった。


* * *


 パジャマに着替えたふたりは、ベッドでプレゼントを交換した。


「んじゃ、俺から開けるぞ」


 青い包装紙を開けば、出てきたのは革製の長財布だった。


「おっ、財布か。いい色じゃん」


 開いたりして、使い勝手をイメージする。触り心地の良い革は手の平に吸いつくように、しっとりとしていて滑らかだ。


「……は? 定番でごめん、って……なんで謝るんだよ。めちゃくちゃ嬉しいよ、オレ。ってか、定番でダメならオレのプレゼントもアウトだっつの」


 唇を尖らせて、颯汰は彼女が膝の上に乗せているプレゼントを指し示す。


「ほら。お前もさっさと開けろって」


 彼女が丁寧に包装紙を外せば、

 中から現れたのは、小粒のダイヤモンドが一連に並んだネックレスだ。


「な? 去年引き続きド定番だろ。ダメだった?」


 首を左右に振る彼女に、颯汰は「良かった」と微笑む。

 ついで包み直そうとする手を制し、プレゼントを取り上げた。


「なあ。すぐ外すからさ。今付けてみてもいい?」


 戸惑いつつも彼女は頷く。

 颯汰は嬉々として首飾りを手に取ると、彼女が髪を退かすのに合わせて、首の後ろに手を伸ばしネックレスの留め具をはめた。


「……うん。すげー似合ってる」


 気恥ずかしそうにする彼女に、颯汰ははにかんだ。


「来年はどうすっかな。アクセサリーが続いてるから来年は靴とか……

 ん? なんでそんな嬉しそうなんだ、って……

 お前が身につけるものの中にオレが買ったのが増えてくとさ、独占できてるなーって実感して嬉しくなっちまうんだよな」


 言ってから、颯汰は照れ隠しに頭をかいた。

 口説き慣れていると誤解している彼女は、またそんなことを、と呆れるかもしれないが、全て心からの言葉だ。


 すると予想外のことに、彼女は頬を染めて嬉しそうに呟いた。……気持ちはわかる、と。


 驚いた。と同時に、愛おしさのバロメーターが軽々と振り切れる。

 いつも軽くあしらわれることの方が多いから、こんな風にされるとたまらなかった。


(……なんでこんな、可愛いんだよ)


 颯汰は彼女の頬に手を伸ばした。

 瞳を覗き込むようにしながら、親指で唇に触れ、そっと押し下げる。

 されるがまま半開きになった唇の奥に、赤い舌が覗いた。それだけで目がくらむほどの激情が湧き上がってきた。


 よく知るボディソープの匂いが鼻先を掠める。

 ベッドはくるおしいほど、彼女の香りで満ちている。


……数え切れないほど抱いたのに、未だに余裕がない自分が情けない。


「好きだよ……」


 囁いて、唇を重ねた。

 触れるだけのキスに続き、舌を忍び込ませて吐息を奪う。


「ん……んん、ぅ……は、ぁ……」


 唇で舌を挟み扱くようにしながら、2人分の唾液を飲み下し、角度を変えて何度も深く口付けた。


「ン……お前から……ふ……舌、絡めてくるなんて、珍しいじゃん……」


 指摘すれば、彼女は我に返ったように唇を離そうとする。

 それを、腰を抱き寄せ阻止をして、颯汰はそのまま彼女をベッドに押し倒した。


「……キス、やめるなよ。嬉しいんだから」


 再び唇を塞ぐ。


 部屋にくちゅくちゅと淫らな水音が響いた。

 彼女の頬が耳まで赤く染まって、颯汰の背に手が回る。膝が開き、ふたつの身体がピタリと重なる。


 と、颯汰は彼女を抱いたままくるりと反転して上下逆になった。


「……なあ、上に跨がって」


 目を瞬かせる彼女を見上げて、艶やかに微笑む。


 束の間、彼女は逡巡したものの、おずおずと言われた通りにした。


 颯汰は彼女のパジャマのボタンを一つ一つ外していった。袖から腕を抜き、腰を持ち上げさせて下着姿にした。

 彼女が自らブラジャーを外す前に、手を伸ばしてホックを外し、枕元に放る。


 それから半裸になった伴侶をしげしげと見上げた。

 恥ずかしそうに胸を隠す彼女の腕をどかし、左右の豊かな膨らみを鷲掴む。

 甘やかな声が耳に届き、知れず颯汰の喉が鳴った。


「……結婚したらさ、嫁に欲情しなくなるって話聞くけど、あれマジで理解できねぇわ。

キスしただけでバキバキになるっつの」


円を描くように胸を揉みしだきながら、時折、指で乳首を挟むようにして刺激する。


「……あん? 今だけだ?

……言ってろよ。そんなことねえって、毎日、毎月、毎年、しっかり証明してやるから」


 身体を引き寄せ胸元に顔を寄せた。

 ちゅぱっと音を立て乳輪ごと口に含む。


「オレも……お前に飽きられないように、いつまでも魅力的な顔面国宝でいねぇとな……」


 手の動きに合わせて形を変える膨らみを堪能しながら、乳首を舌先で転がし強めに吸った。


 ゆるく颯汰の頭を抱く彼女の腕に、だんだんと力がこもっていく。

 唇から溢れる吐息が次第に嬌声に変わり、もどかしげに身体が揺れた。


「腰、動いてる……自分で擦りつけてんの、わかる……? ホント、エッチになっちまって……」


 颯汰は胸を弄っていた手を腰へ移動させた。

 尻房を揉みしだき、下着の隙間から指を忍ばせれば、ソコは下着がしめるほどぐっしょりと濡れている。


「はは、やば……ぐちゅぐちゅ……」


 少し押し込んだだけで、穴口はずっぷりと指を咥えこんだ。ふやけるほど濡れた膣襞が絡みつくようにうねる。


「こんな濡れてちゃ、指で解すまでもねぇな……。あー、ヤバ……めちゃくちゃ舐めたい……」


 少し激しめに指を動かしながら、颯汰は彼女の耳元で囁いた。


 膣穴に舌をねじ込み、敏感な部分を指で苛め抜きたい。ぐったりするまで何度もイかせて、理性の殻を粉々に打ち砕きたい……

 彼女の痴態を考えるだけで、ズボンの中で愚息が苦しいほど張り詰めるのを感じた。


「なあ。このまま顔んとこまで来て」


 颯汰は甘えるように告げる。しかし、彼女は首を横に振った。


「え、なんでだよ。いつもしてんじゃん」


 キョトンとする彼の指から逃れるように、彼女は膝立ちした。かと思えば、颯汰のズボンを引っ張る。

 促されるまま腰を持ち上げれば、性急に、下着ごとズボンを脱がされ、怒張した肉竿が跳ねるようにして露わになった。


「んっ……」


 柔らかな手が血管の浮いたソレを包み込み、根本からカリ首までを擦り上げ、先走りで濡れた先端を優しく撫でる。


「……そんな、欲しいの?」


 問いかけに、彼女は問いで返した。――颯汰は欲しくないのか? と。

 頬を赤らめ目を潤ませる彼女は、発情したメスの顔をしている。


「オレだって、お前が欲しいよ。早く中に入りたくて、おかしくなりそ」


 颯汰は胸を喘がせて応えた。


「お前のことめちゃくちゃに突き上げて、奥に全部ぶちまけたい……」


 彼女の喉が上下する。

 赤い舌が、唇を舐める。


「……挿れていい?」


 彼女は頷く代わりに下着を脱ぎ捨てた。

 ついで屹立を手で固定し、ゆっくり腰を下ろしていく。

 颯汰は熱っぽい眼差しで、そんな伴侶を見つめた。


「ん、ぅ……」


 傘張った先端が水音と共に潜り込み、かと思えば、ヌルンッと全てを飲み込まれる。


「っ……あ、つぅ……中、とろけてる……っ」


 躊躇いがちな、緩慢な動きに合わせて、颯汰も腰を突き上げた。

 結合部はあっという間にベトベトになり、垂れた愛液がベッドに染みを作る。


「は、ぁ、あっ……んくっ……気持ちいいよ……すげえ、いい……っ」


 無心で粘膜を擦り合わせれば、彼女の腰遣いが激しさを増していき、ひりつくような快感が全身に沁みていく。


「はっ……身体、前後に動かす方が、いいんだ……? 擦れて……気持ちいい……?」


 彼女は唇を震わせ恥ずかしそうにしたものの、止まらない。


 颯汰は腹の上に乗せられていた手に手を重ね、指を絡めて恋人繋ぎをした。


 胸が大きく跳ねて、その谷間でネックレスが輝いている。


「ぅ……やべぇ。このままだとすぐイっちまいそう……な、そろそろ交代しようぜ」


 限界を覚えて、颯汰は口を開いた。

 絡めた指を解こうとすれば、逆に強く握りしめられた。組み敷くようにされて、繋いだ手をベッドに押し付けられる。


「なに――ぅ、あっ……!」


 前後運動から、上下運動へ。

 彼女はギリギリまで腰を持ち上げると、一気に落とすを繰り返す。


「ま、待てって、それ、ヤバイっ……て!

 はぁ、ぁ、おまっ、それ……オレが弱いの知ってるくせに……っ」


 颯汰の形のいい眉が、切なげに寄った。


「バカッ……! ホント、それすぐ出るからっ……!」


 ずっぷりと最奥に埋まった先端を、まるで咀嚼されるみたいに刺激される。それは苦しいほどの快感で……一瞬で意識を刈り取られそうになった。が、なんとか耐えた。

 耐えたが……このままでは時間の問題だろう。


 けれど身体をズラそうにも、膝で脇腹を固定されてしまっている。繋いだ手も振り解けない。


「んくっ……そんな、締め付けんなっ……

 お前だって、長く楽しみてぇだろ……っ?」


 颯汰の焦りに気付いた彼女は、少しだけ嬉しそうにした。そうして小首を傾げる。


「……1回で終わるつもりか、だと? へぇ?」


 投げかけられた挑発的な問いに、颯汰は口の端をヒクつかせた。

 ここ最近、ベッドでの優位性が危うくなっているのは自覚しつつあったが、だからと言って大人しく負けるつもりはない。


「抜かずに何発イけるか、試してみる?」


 颯汰はニヤリと笑うと、彼女の髪に指を差し入れ抱き寄せた。


「中、オレので真っ白に汚してやるから……覚悟しろよ」


 唾液を交換するみたいなキスをし、激しく揺さぶる。


「はぁ、はぁっ……っ……あー、ヤバ、出る……っ、出す、からな……」


 精を搾り上げるように媚肉がうねり、つながった部分から肉体の境界線が溶け出した。


「好きだ……好きだよ……っ……」


 重ね合わせた手を、白くなるほど握りしめる。


 来年も、再来年も、こんな風に過ごせればいい……颯汰は祈るように、キスを繰り返す。

 ありふれた日常を、いくつもの奇蹟を重ねた今を、閉じ込めて逃がさぬように。


Fin


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